教材校正者の観点から伝える社会科

はじめまして。
TKM合同会社様のお仕事をさせていただいております、川端です。
中学地理・歴史・公民の社会科を中心に校正・校閲業務を担当しておりますが、
小学生から大学受験までの社会科と、情報や副教科など
幅広くお仕事をさせていただいております。

今回、「学校の先生方向けのブログを書いてみませんか?」とお話をいただき、
「ええ!面白そう!いいんですか?」
と2つ返事でお請けしたものの、
学校の先生方の圧倒的な知識量に対して、
一校正者としていわゆる「読み物」的なものを提供できる自信などなく、
いろいろ思案した結果、

 教材校正者の観点からお伝えする社会科

をテーマに、「教材校正ってこんなお仕事なんだな」ということと、
自他ともに認める変わり者である私が、
こんな風に仕事をしているのだな、
ということをお伝えできればと思っております。
駄文にはなりますが、これからお付き合いいただけましたら幸いです。

教材校正者の仕事

さて、テレビドラマなどでも有名になりましたが、
「校正者」はざっくりいうと「文章をチェックする人」になります。
執筆者 → 編集者 → 校正者 → 編集者 → 執筆者 → 編集者(発行・出版)
大体、このような流れで原稿が完成します。
一般的な校正者が確認するポイントとして、

    • 誤字脱字はないか
    • 文末表現は統一されているか(「答えましょう」「答えなさい」「答えよ」など)
    • フォントは揃っているか
    • 段落(字下げ)やノンブル(ページ数)は合っているか

などがありますが、問題集などの教材校正者はこれに加えて、

  • 問題文を読んで解答できるか
  • 解答に誤りや別解がないか
  • 問題文中に答えが紛れ込んでいないか
  • 配点の合計が満点になるか
  • 解答欄は適切か
  • 出題範囲外ではないか
  • 解説は事実かどうか(ファクトチェック)

など、一字一句読み進め実際に問題を解いていきます。

いったいどこまでが事実なのか

では、ここで(独断と偏見による)校正クイズです。
縄文時代の問題でよく登場する「土偶」。
一度は資料などでご覧になったことがあるかと思います。
土偶について説明した次の文について、指摘を入れてみてください。
「土偶」は女性をかたどった土製の焼き物で、貝塚から発見されている。
・・・どうでしょうか?
一見正しそうに見えますが、もし私がチェックを入れるのなら下記のように修正案を出し
ます。

「土偶」は土製の焼き物で女性をかたどったものが多く、貝塚などから発見されている。
・・・違いがわかりましたか?
個人的なポイントは下記の通りです。
・「土偶」は動物や男性など、女性以外のものも発見されているため「~女性をかたどっ
たものが『多く』」と変更
・貝塚以外からも発見されているため、貝塚「など」を挿入
・事実のみを記載する
※ 以上は、私の独断と偏見による指摘ですので、あくまでご参考程度に・・・。

私たちの指針はやっぱり「教科書」

「教科書」に忠実であること。
これが教材校正の大前提であり、基本です。
まだ断定はできないけれど、最近の発見ではこういった説もあります、という場合や、
特に文献等が残っておらず検証できない時代についての記述などでは、
「~といわれている」「~という説が有力である」
と、断言はせず否定もしない、という姿勢をとっています。
邪馬台国は近畿地方に存在した、という説が有力である。

このように使います。便利ですね!
(某漫画に登場する架空の出版社みたいですが・・・)

いつでも客観的に

一般書籍の内容や、
公にはまだ認められていない事象については、
ぼやっとしたニュアンスに変更する朱入れ(指摘、修正)をします。
時々、自己主張の強い原稿に遭遇することもありますが、
執筆は本当に大変な作業なので作成者を尊重しつつ、
苦笑いしながら「諸説あります」というような、青字(意見出し、提案)を入れます。

これは校正仲間の方にお伺いした話ですが、
教科書会社に最もクレームが多い科目は「社会科」だそうです。
そのため、社会科の校正者は「客観的な視点を持つ」「少数意見も大切にする」という観
点が大切です。
近年、問題文中に登場する「Aくんは」「Bちゃんは」という表現はNGとされ、
性別に関係なく全員「Aさん」「Bさん」に変更し、
語尾も「~だわ」「~なのね」と女性と特定されるような表記も指摘するようにしていま
す。
(実際、そんな口調の女の子に遭遇したことは一度もありませんが・・・)

時代のニーズに合わせる

以前、小学生の教材で洗濯の歴史を紹介する文章を校正したことがあります。
30年以上前の家事については、
「2槽式洗濯機を使うお母さん」
「たらいと洗濯板で洗濯をするお母さん」
と、女性のイラストが挿入されていましたが、
現代の家事については、
「男の子がお母さんのお手伝いをしている場面に変えてください」
「お父さんが洗濯機を回しているイラストにしてください」
と指摘したこともあります。
(その指摘が採用されたのかどうかはわかりませんが・・・)
また、センシティブな内容については、様々なご家庭の事情がある子どもたちが問題文を
読んで傷つかないように配慮することも意識しています。
社会科は時代背景や時流に沿った感覚が最も求められる教科ではないかな、と思っており
ます。
最新のニュースなどに触れ、日々感覚をアップデートしていきたいですね!

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