こんにちは、代表の斎藤です。
5月もあっという間に最終週。時間の流れが早くなっているように感じるのは私だけでしょうか。
さて、今日はちょっと趣向を変えまして。
認知心理学を踏まえた教授法を考えてみました。
ぜひ、ご参考にしていただければと思います。
そして、この場が皆さんのアイディアをどんどん共有できるような場になればいいなぁと思っております。
日本人が「電気」について初めて学ぶのは小学校4年生です。
4年生の単元「電池のはたらき」では、乾電池の他に、太陽電池(光電池)を教材として扱うようにと、小学校学習指導要領で定まっていますが、その発電の原理については当然のことながら小学生にとって難しい内容。
さて、ここで問題です。
「太陽電池は何のエネルギーを電気エネルギーへと変換しているでしょう?」
理由とともにお答えください。
いかがですか?
板橋夏樹さん(茨城県行方市立玉造中学校)と大高泉さん(筑波大学大学院人間総合科学研究科)の研究論文によると、調査した中学生の約半数が「太陽の熱エネルギーが電気になる」と回答するようです。
また、その考えの理由としては、
- 太陽の光は暖かい
- 黒いものは熱をよく吸収する
の2点が挙げられています。つまり、黒色に近い太陽電池は太陽から放たれる熱エネルギーを効率よく吸収し、それを電気エネルギーに変換しているという考えです。
さて?みなさんは、中学生の大半と同じ答えでしたか?それとも、違う答えでしたか?
自然科学的には、太陽電池は光の持つエネルギーを直接的に電力に変換する装置です。太陽電池内部に入射した光のエネルギーは、電子によって直接吸収され、あらかじめ設けられた電界に導かれ、電力として太陽電池の外部に出力されます。ゆえに、この変換過程において熱等のエネルギーへの変換を必要としません。
また、黒色のものは熱をよく吸収するということに関してですが、これもまたある意味ミスコンセプション(誤概念)です。
「黒い」というのは可視光線についての性質なのです。黒いと可視光線をよく吸収し、吸収した光エネルギーが熱に変わって赤外線として出ていきます。
小学校学習指導要領解説には「光電池に当てる光の強さと回路を流れる電流の強さとを関係付けてとらえるようにする」とあり、学校の先生たちは実験などを通し、授業の中でそのことを説明していると思います。
しかし、児童・生徒の実際の理解は「熱エネルギー」が変換の途中に関わってきているというものでした。
このように、子どもたちが普段の生活の中から得た知識(日常知)が邪魔をして、教科書や授業で習う正しい概念の定着を図れないことを認知心理学では、ミスコンセプション(誤概念、素朴概念)といいます。
さきにあげた2つの理由からこのようなミスコンセプションが生じたのなら、子どもたちのこれら2つの点を否定する、いや1つ目の点を否定する実験を行えば彼らの考えは再構築されることが期待されます。
では、その方策を考察してみましょう。
まず、教材としては小学校のころに使用したものと同様の太陽電池(光電池)を用います。太陽電池を光以外のものであたためた時にモーターが動くかどうかを確かめる実験を行うことで彼らの強固な素朴概念を転換します。具体的な方法としては、手であたためたり、温かいタオルで太陽電池をくるんだり、湯浴をさせたりです。これでモーターが作動すれば熱を電気に変換していると言えるし、作動しなければ、変換されているものは熱ではなかったということが言え、太陽電池は結局のところ光エネルギーを電気へと変換していることがわかります。もちろん、微力な電力で回るモーターでないとダメですが…あっ。もしくは、LEDでも。
「えっ!?こうだと思っていたのに、実は全然違ったんだ!!」
このように、頭で考えていたこと、知識として知っていると思っていたことが実際と全く異なったことに驚きを持った経験はありませんか?
「ものの温まり方」の回転概念なんかもその例ですよね。
・参考文献
【1】CiNii論文『太陽電池に関するミスコンセプションについての研究 Misconception about a Solar Battery 』板橋夏樹、大高泉2007年2月1日受理
【2】日本経済新聞Web刊2009年5月27日『いまさら聞けない「太陽電池」』
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO10977960T10C10A7000000/
お尋ねいたします。確かに光エネルギーを直接電気エネルギーに変換しています。電気回路では電線路の空間を『エネルギー』が負側電線近傍を光速度で伝播します。しかし、理論では何故電線路で必要のない『電子』で語られるのでしょうか。
ご質問ありがとうございます。
ブログも少しばかり拝見いたしました。専門にやられている方にお読みいただき、コメントまでいただけること幸甚でございます。
私自身は、物理学を専門としていたわけではなく、あくまで現在の教科書に立脚し、小学生にエネルギー変換を指導する際の方法を考えたものであることをご留意ください。
ブログ本文では、電子の働きだけで話を済ませておりますが、実際のところは、電子の内部光電効果によるフェルミ準位の差が起電力になり、そのエネルギーが回路に流れて、それを取り出しているという理解をしております。
理解が乏しく解答となっているかわかりませんが、ご容赦いただけますと幸いです。